(1)骨から推理する−縄文人の生活・弥生人の社会
日本人と日本文化の成立にもっとも大きな影響を与えたのは、弥生時代に朝鮮半島から北部九州一帯に移動してきた渡来人集団である。渡来人によって大陸から持ち込まれた水田稲作の技術は、縄文時代の生活の基盤であった食料採集経済を食料生産経済に転換させたが、日本の文化・社会の性格はそれを契機に大きく変わった。今回は、縄文人の狩猟採集、弥生人の稲作農耕というそれぞれの社会の特色を対比しながら、ムシ歯、歯の咬耗、栄養障害などからみた縄文人の食生活、身体障害者の介護からうかがわれる縄文社会の一面、渡来人によって運び込まれた結核、弥生時代の人口増加、重層社会の成立と戦争の始まりなどの問題を、人骨に残されたさまざまな痕跡を手がかりにして推理する。