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6.内容等

(1)骨から推理する−縄文人の生活・弥生人の社会

日本人と日本文化の成立にもっとも大きな影響を与えたのは、弥生時代に朝鮮半島から北部九州一帯に移動してきた渡来人集団である。渡来人によって大陸から持ち込まれた水田稲作の技術は、縄文時代の生活の基盤であった食料採集経済を食料生産経済に転換させたが、日本の文化・社会の性格はそれを契機に大きく変わった。今回は、縄文人の狩猟採集、弥生人の稲作農耕というそれぞれの社会の特色を対比しながら、ムシ歯、歯の咬耗、栄養障害などからみた縄文人の食生活、身体障害者の介護からうかがわれる縄文社会の一面、渡来人によって運び込まれた結核、弥生時代の人口増加、重層社会の成立と戦争の始まりなどの問題を、人骨に残されたさまざまな痕跡を手がかりにして推理する。

(2)日本人の起源

考古資料は、岩宿(旧石器)時代以来、縄文時代を通じて、サハリン・朝鮮半島経由の北アジアとの結びつきをしめしており、南アジアとのつながりは希薄である。自然人類学は、縄文人を南アジア系と見てきた。しかし、今、北アジア系とする解釈が生まれ、考古・自然人類学間の矛盾は解消に向かっている。

北部九州地域(福岡・佐賀、山口県日本海岸)の弥生人骨の大多数は、山東半島や朝鮮半島からの渡来者及びその子孫とみられ、自然人類学では、弥生文化の成立にあたって、そしてそれ以降、大量の移住を考える。しかし、考古学では、弥生稲作文化の源郷である朝鮮半島の土器・石器・墓が、そのままの形で入っておらず、弥生早期以来、縄文からの伝統的要素が濃厚であることから、到来者の数を少なく見積もる意見が強い。この矛盾はどう解消できるか。

 

 

 

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